twanosuu と鼎月の神話
トヮノスー鳥が腹を空かして步いてをりますと、自分の屍體がありました。
トヮノスー鳥が自分の屍體を食べてゐると、恰度其處に白い月 Isi が通り掛りました。 「何を食べてゐるのですか。」と白い月は御尋ねに成りました。
トヮノスー鳥は噓を吐きました。「土から生えたイーフェ Ife を食べてゐるのです。」 白い月は少し訝しげでしたが「さうですか。」と御應へに成りました。
其の時です。トヮノスー鳥は自分が土から生えたイーフェを食べてゐるのに氣付きました。
斯くして世界には土とイーフェが在りました。
しかし、トヮノスー鳥はイーフェではなく肉が食べたかったのでした。
トヮノスー鳥は肉を探して土を掘りました。
土からは翡翠が澤山出て來ましたが、肉は出て來ませんでした。
トヮノスー鳥が御腹を空かせて步いてをりますと、黑い月 Igax が濱邊で魚を干してをりました。 トヮノスー鳥は尋ねました。「干物を分けて下さいませんか。迚も御腹が空いてゐるのです。」
黑い月は應へました。「分けて上げても良いが只と云ふ訣には行かない。御前の持ってゐる物を何か代りに吳れたら、干物を分けてやらう。」
トヮノスー鳥は先程掘り出した翡翠を澤山持ってゐましたので、其れを黑い月に差し出しました。
「先程、澤山のホドロの實 hOdoro を見付けましたが、私は果物が食べられません。此れと干物を交換しませう。」 黑い月は干物を一尾取ると、其れをトヮノスー鳥に與へました。
トヮノスー鳥は干物を食べて腹を滿たしました。
斯くして世界には翡翠とホドロとがありました。
トヮノスー鳥が__してをりますと、赤い月 Ada が弓矢を手に狩りをしてをりました。 トヮノスー鳥は、美味しい鳥の振りをして赤い月の前を飛び囘って逃げ去る惡戲を思ひ付きました。
トヮノスー鳥は赤土を捏ね、其れで身を飾り、セモラー鳥 semoraa の樣な姿に扮して茂みの中に隱れました。 そして頃合を見計らって、赤い月の前に突然に飛び出しました。
赤い月は、直ぐさま現れた鳥に目掛けて矢を射放ちました。
矢は鳥の胸に當り、鳥は地に落ちました。
血と色取り取りの羽根と赤土とが邊りに飛び散りました。
血を浴びて飛び散った色取り取りの羽根は、幾百もの樣々な鳥 mIto と成って逃げ去りました。 血を浴びて飛び散った赤土は、幾百もの樣々な禽 gEqu と成って逃げ去りました。 赤い月が驅け寄って見ますと、其處には死んだトヮノスー鳥が倒れ伏してをりました。
「何と此れは、肉苦臭きトヮノスー鳥ではないか。私を騙したのだな。どうして吳れようか。」
「嗚呼、御月樣、どうか御赦し下さい。」
「否、赦さない。御前はセモラー鳥として死んだ。我々は御前の肉を捌き、炙り肉にして食べる。」
トヮノスー鳥は、自分がセモラー鳥の屍體に成ってゐるのに氣付きました。
赤い月はセモラー鳥の屍體を持って歸り、捌いて炙り肉を拵へました。
三つの月は其れを皆んなで食べたのでした。
構造
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行為の對象 行為 見掛け 眞實 返答 創られるもの
白い月 嘘を附く イーフェ 自身の死骸 肯定する:「さうですか」 農
黑い月 騙す ホドロの實 貨幣 交渉する:「御前の持ってゐる物を何か代りに呉れたら」 經濟
赤い月 惡戲をする セモラー鳥 裝束 決定する:「否、赦さない。御前はセモラー鳥として死んだ」 狩り